今回は今でも時折、生徒の前で話すことがあるSさんについて話したいと思います。Sさんとの出会いは中三の七月でした。Sさんのお母さんから新潟の家庭教師のアズに初めてお問い合わせのお電話をいただいた時のことを今でもよく覚えています。娘がノートいっぱいに繰り返し英単語の書き取りをしているのに、ぜんぜん覚えられないで泣いている、とお母さん自身も困り果てている様子でした。そこで早速、学習相談に行く約束をして実際にSさんとお会いしてみると、Sさんの印象は落ち着いた雰囲気でとても真面目な感じの生徒でした。まず手始めに英単語の書き取りをしたノートを見てみると、予想以上に余白がないほどにぎっしりと筆圧の濃い字体で書かれており、Sさんも改めて見ると泣き出してしまいました。ただ、これほど一生懸命に覚えようと思って書き取りをしてもなかなか覚えられない生徒に私は今までに出会ったことがなく、気になることが三つあったので聞いてみることにしました。書き取りの中からランダムに五つの単語を選んで「発音してみて」、「日本語の意味は」、するとSさんは発音こそ何となく読めたものも一つありましたが、意味に関しては全く答えられませんでした。そして「書き取りをするとき無言で前に書いたものを見ながら書いていない」、と質問すると「はい」、とか細い声で返答してくれました。
これだけたくさんの英単語をノートにぎっしりと書き取りしていたので、お母さんもまさか発音できないとは思ってもみなかったようで大変驚かれていました。そこで暗記は情報量を少なくするとあまり重要ではないと脳が判断するから、あえて目には見えない発音を最初にすることで情報量を増やして記憶に定着しやすくしようと話した上で、一緒にスペル練習をしていきました。すると発音とセットにしたことでその場でいくつか書き出せるものが出来、Sさんの表情がすっかり明るくなりました。その後、家庭教師の先生と基本を大事にきちんと理解してから練習する勉強を開始していったところ、Sさんは持ち前の真面目さで着実に成績へも好転して無事に志望校へ合格してくれました。
人はどうしても目に見えるものを重要視して発音や語句の本来の意味をあまり意識しないまま、勉強時間と問題数さえ多ければ必ず成績アップにつながるはずだと考えて必死に努力しがちです。確かに目の前にたくさん書き取りをしたものや問題集のページ数、経過した時間を見て自分はよく頑張った、と思って安心してしまう経験を少なからずしたことがある方も多いのではないかと思います。しかし、これらはあくまでも目標に対する結果であって、このこと自体が目的ではないと思います。そのことを知らないまま苦しくて大変な勉強を続けてしまい、結果が伴わないことでさらに勉強が嫌いになって取り組みたくなくなるといった悪循環に陥っている生徒を新潟と北陸で私自身も数多く見てきました。だからこそ、私たち家庭教師のアズ新潟では教科書をはじめとした学校教材を中心に生徒さん一人一人の個性や状態に合わせて基本から親身に一歩一歩着実に教えていくことで、勉強をしていく面白みや自信をつけてもらいたい、と強く願いながらこれからも真剣に目の前の生徒に全力で対応していきたいと思います。